テニス業界に八百長疑惑が

Yahoo!ニュース引用

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pixta_8965579_XL全豪オープンの開幕に合わせるように飛び出したテニスの八百長疑惑は、結論がまだ出ないまま、不気味に燻っている感じだ。

イギリスBBCとインターネットのニュースサイト『バズフィード』のスクープで騒動は始まった。「過去10年にわたって、世界ランキング50位以内に入ったことがある16人の選手が、意図的に負けた疑いがある」という内容。そこにはグランドスラム優勝者も含まれており、8人以上は今大会にもエントリーしているというから衝撃的だった。

ATPはその事実を隠蔽したという指摘を否定し、過去10年の調査、報告等が適切に行なわれていたことを強調したが、その後に南アフリカの選手が匿名で「八百長は公然の秘密で、トップの選手もある程度は汚れている」と証言するなど、疑惑は深まるばかり。「こうなったらもう名前を公開してほしい」と元王者ロジャー・フェデラーは業を煮やし、多くの選手・関係者はこれに同調する。

プロテニスの試合は世界中で広く賭けの対象になっている。毎週のように世界のどこかで大会が行なわれ、毎日試合があるのだからそれも当然だ。加えて、1対1の戦いでは「意図的に負ける」ということが簡単にできてしまうし、たとえ格下の相手に予想外の負けを喫したとしても、実はどこかを痛めていたのだと言えば、なるほどと納得もされるだろう。また、セットごとの結果に対する賭けもあるそうだから、最終的に負けることなく八百長に加担することもできるのだ。

最初に報じたバズフィードの記事では、選手は5万ドル(約600万円)以上を提示されたとあった。テニスプレーヤーにとって5万ドルというのはどれくらいの価値か。たとえば今開催中の全豪オープンで2回戦に進めば6万7000ドル(約560万円)ということは、ある程度参考になるだろうか。1回戦敗退でも3万8500豪ドル(約320万円)。それでも他のグランドスラムに比べて安い。しかし、グランドスラムの賞金は過去10年でうなぎのぼりだということ、グランドスラム以外の賞金はこれほど高額でないことを忘れてはならない。グランドスラムの常連レベルなら、金銭的な心配はまったくしなくてもいいと言われる所以だ。

07年に当時4位のニコライ・ダビデンコ(ロシア)が八百長に加担したと疑われた事件が起こり(結局証拠不十分で「無実」とされた)、それ以降、急激に厳しくなった取り締まりの下で何人かの選手が永久追放を含めて処罰を受けているが、今回報じられたようなトップ選手はいない。いるはずがないとも考えられていた。試合をすればはるかに高額の賞金を得られる選手に、八百長を持ちかけるとも、それに乗るとも考えられなかったからだ。

ところが、今回のスクープの信憑性を高めたのが、ノバク・ジョコビッチの証言だった。07年に20万ドル(約2400万円)で八百長を持ちかけられたということに対して、彼自身が肯定。ただし、「僕自身ではなく、当時僕の関係者だった人物に接触があった。彼らはすぐに拒否し、話は僕のところにまで届かなかった」と関与は否定した。

この年のジョコビッチは年初の全豪でベスト16まで進出し、今の賞金なら19万3000 豪ドル(約1600万円)が入ったはずだが、当時は6万2780ドル(約740万円)にすぎなかった。

グランドスラムの賞金はこの10年でうなぎのぼりなのだ。また、八百長を持ちかけられた大会は10月のサンクトペテルブルクで、結局ジョコビッチは出場しなかったが、この大会で優勝したアンディ・マレーが手にした賞金は14万2000ドル(約1200万円)。ジョコビッチが提示されたという額より少ないのだ。

今や生涯獲得賞金が1億ドル(約120億円)に達しようかというジョコビッチだが、当時なら決して安い金ではなかったのかもしれない。また、その年、20歳にしてウィンブルドンでベスト4、全米オープンで準優勝したジョコビッチは将来の王者候補として大いに注目されており、持ちかけた人間、組織にとっては優勝賞金以上の報酬を支払ってでも「元は十分にとれる」だけの金が動くはずだったことが推測できる。

何年か前にロジャー・フェデラーが選手会の会長を務めていた頃、賞金の底上げを強く要求し、それが反映されてきた背景がある。当時、「トップ選手の賞金の総額よりも、グランドスラムの1、2回戦レベルの選手たちが安心してキャリアを続けていけるような賞金を実現させなくてはいけない」という主張を聞き、なんという心優しい人なのかと感動したものだが、今にして思えば、それだけではなく「そうしなければ腐敗が広がる」という危機感があってのことだったのかもしれない。

ただ、一方でテニスは賭け自体を排除しているわけではなく、かつては合法のブックメーカーがこの全豪オープンの会場内にあったほどだ。それがダビデンコ事件を受けて会場からは撤退。しかし、今もこの大会のスポンサーの一つは『ウイリアムヒル』というオンライン・ベッティングの会社なのだ。テレビ中継の合間にも「さああなたも賭けてみよう」というようなコマーシャルが入る。

ダブルスタンダードにもほどがある——。強まる指摘にテニス界はどう答えを出していくのだろうか。

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